本日二つ目の投稿です。
少なくない方々から「otophonicsのリファレンスヘッドフォンを教えて欲しい」という要望がありました。
個人的に特定の製品だけを推奨していると取られかねないのでその公開には消極的だったのですが、今日までにさまざまな環境で自分自身も試聴を行ってきた過程で、確かに試聴用のデバイスの差異による前後の定位判定のばらつきは看過できないほど大きなものだという結論に達しました。
前方で鳴るべき音が後方で定位してしまう人の多くが、いわゆるオーディオ用ヘッドフォン…オーバーヘッドバンド型のヘッドフォン…それもオープンエア型のものか、あるいは携帯用音楽再生機などに付属の簡易型インナーイヤフォンを使ってらっしゃいました。
頭部形状の差異に脳が適応すれば、そのようなデバイスでも脳が記憶を元に補完する情報で前方からの音が感じられるものですが、それでも慣れているはずの私でさえ前方定位しないというヘッドフォンの多かったこと。
これはユニットの経年劣化だけでなく、ヘッドフォンがオーディオ用途として音作りを行っていることとも無関係ではないと思われます。言い換えれば、本来録音時に記録された情報が極力無加工で脳に届けられてこそ判断できる内容が、オーディオ用途のヘッドフォンによっては歪められてしまっているということです。
そこで、otophonicsを視聴する際にどのような条件のデバイスが最適なのかを挙げます。まず大切なことはモニターヘッドフォンもしくはモニターイヤフォンであることです。オーディオ製品はいわゆる「味付け」が行われており、その為に周波数や位相がかなりひずんでしまいます。otophonicsのような立体音響は測定機器並みとまでは言わないまでも、ある程度フラットな周波数特性を録音時再生時ともに要求しますので、一般的なオーディオ用ではなくスタジオモニター用などの味付けを行わない機器が適しています。具体的には
・カナル型かそれに近いインナーイヤフォンであること
・周波数特性がフラットであること(低音の強調などの操作を行っていないこと)
となります。
カナル型インナーイヤフォンであれば、例えオーディオ用であったとしてもヘッドフォンでありがちな耳介の形状を考慮した音作りは行われていないと思われます(また厳密なカナル型でなくともイヤーチップが音の出口になるため事実上非常に近い特性を持ちます)し、その中でさらに周波数特性がフラットなものであれば、録音時の音場を極力加工することなく脳に届けることができます。
現状私が検証時に使用しているものはSONYのMDR-EX90SLという機種です。その前は同じSONYのMDR-Z900というヘッドホンでした。
別に私は特にSONY製品だけを使っているわけではないのですが、前者は価格、後者は縁でそれぞれ使用しています。
出来ればあらゆるメーカーのカナル型イヤフォン及びモニターヘッドフォンで検証してみたいのですが残念ながら資金がありません…。もし協力してくださるメーカーさんがあったら是非検証させてください。
さて、そういうわけで前方定位のはずが後ろに折り返してしまった数名の知り合いの方に前記のインナーイヤフォンを使って聴き直してもらったのですが、今のところ全員が何らかの定位の改善を見ています。その状態で聞き続ければ脳が学習するだろうと確信するに充分でした。また半数は音が前から聞こえるようになったとのことでした。
音楽を聴いているときにはついつい意識しないヘッドフォンやイヤフォンですが、このような音源では細心の注意を払って選ぶ必要があると改めて確信しました。
Saturday, June 30, 2007
Subscribe to:
Posts (Atom)